スーパーや精肉店、飲食店などでよく目にする「A5」や「A4」などの等級表示。
精肉店の表示も「和牛A5」があったり、「和牛4等級」とあったり。“A”がつくものと付かないもの、何が違うのか分かりにくいかと思います。そこで今回は、牛肉の格付け等級について分かりやすく解説します。
また、最近関心が高まりつつある赤身肉の等級についても説明します。読み終えていただければ、和牛の等級についての知識が身につき、和牛を購入する、もしくはお店で注文するときに選択肢が大きく広がるのでぜひ最後までご覧下さい。
牛肉の取引は、畜産農家で肥育された牛が屠畜(とちく)後、主に枝肉と呼ばれる状態で行われています。
枝肉とは、内臓を除去して、頭から尾にかけて二分割された骨付きの肉の状態を指します。この枝肉の状態での品質を、全国共通の品質指標に基づいて評価判定し、等級の格付けがされたものが、私たち消費者が手にとる際に目にしている等級になります。
枝肉の等級の判定は、「歩留まり等級」と「肉質等級」の二つの判定の組合せにより評価されています。
●歩留まり等級がAからCの3段階
●肉質等級が1から5の5段階
この組合せにより、A5からC1まで15段階に等級分けが行われています。
また、この等級は成牛を対象としており、子牛の枝肉については適用されていません。
歩留まり等級と肉質等級について
歩留まり等級とは、屠畜前の牛肉の体重に対する、牛枝肉の割合を歩留まり等級としています。
頭部、尾、四肢端などを切取り、皮や内臓を取り除いた状態の牛枝肉を算式を用いて、歩留まり基準値を算出しています。
歩留まり等級はAからCの3区分で評価されます。
A(部分肉歩留まりが標準よりよいもの)>B(部分肉歩留まりが標準のもの)>C(部分肉歩留まりが標準より劣るもの)
次に、肉質等級ですが、「脂肪交雑」「肉の色沢」「肉の引き締まり」「脂肪の色沢と質」の4項目について、1から5までの5区分を設けて判定しています。
肉質等級の決定は、この4項目について、それぞれ判定された最も低い等級が肉質等級として決定されています。
脂肪交雑
脂肪交雑とは、霜降り度合を脂肪交雑基準(B.M.S)による12段階の評価により1等級(霜降りがほとんどない)から5等級(かなり多い)に分類します。
1等級(ほとんどない)<2等級(やや少ない)<3等級(標準)<4等級(やや多い)<5等級(かなり多い)
肉の色沢
肉色と光沢を牛肉色基準(B.C.S)と肉眼による判定で等級を決定しています。一般的に鮮鮭色(イメージとしては鮮やかな鮭の身のような色)が良質とされています。
1等級(劣るもの)<2等級(標準に準ずるもの)<3等級(標準のもの)<4等級(やや良い物)<5等級(かなり良い物)
肉の締まり及びきめ
肉眼で締まりときめを判定し、等級を決定しています。「肉の締まり」は赤みと脂肪がしっかり詰まった状態のものほど、良質とされています。また、「きめ」とは、筋肉組織を構成する筋組織が集まった「筋束」の細かさのことです。細やかなものほど良質とされています。
1等級(劣るもの)<2等級(標準に準ずるもの)<3等級(標準のもの)<4等級(やや良い物)<5等級(かなり良い物)
肉質等級
脂肪色を牛脂肪色基準(B.F.S)、光沢及び質は肉眼を用いて判定し、等級を決定しています。
1等級(劣るもの)<2等級(標準に準ずるもの)<3等級(標準のもの)<4等級(やや良い物)<5等級(かなり良い物)
参照元:牛枝肉取引規格の概要
つまり、牛枝肉に解体した際の歩留まりの高さと、牛肉の霜降りの量が多く、光沢、肉質のきめの細やかなものが、牛肉の品質として高い等級として評価されています。
牛枝肉と牛部分肉について
スーパーや精肉店で牛肉の表示をよく見ると、「和牛A5」の表示の他、「和牛4等級」といった表示に気が付かれた方も多いのではないでしょうか。
「和牛4等級」と「和牛A4等級」の違いはわかりにくいですよね。
実は、これは先程の牛枝肉をロースやヒレなど各ブロック毎に分割、整形した牛部分肉について判定される等級のことを指しています。
牛部分肉とは、「ネック」「かた」「かたロース」「かたばら」「ヒレ」「リブロース」「サーロイン」「ともばら」「うちもも」「しんたま」「らんいち」「そともも」「すね」の13の部位に分けられたものを指します。
部分肉の肉質の等級は枝肉の肉質の等級と同じ基準が採用されています。
また、部分肉には肉質等級の他、重量区分によって、S、M、Lの重量等級の区分もありますが、こちらは表示の義務が無いため、表示されていない場合もあります。
和牛等級だけではないー広がる消費者の嗜好
令和3年の牛枝肉の総格付頭数のデータでは、総数が89万4203頭とあり、格付けされた牛枝肉のうち、「A5」評価は21万7292.5頭だそうです。その内、「和牛」は約52%(46万5074.5頭)と半数を占めています。
また、「A5」等級と格付けされた牛のうち、和牛が占める割合は99%を超えているそうです。和牛が高品質と評価が高いのはこういった品質の裏付けがあるからなのでしょう。
和牛の種類は、在来種である「黒毛和種」「褐毛和種」「日本短各種」「無角和種」と、この4種の交雑種からなります。全国で飼育されている和牛の約98%は「黒毛和種」が占めていると言われています。
黒毛和牛は松阪牛、神戸牛、米沢牛、但馬牛、近江牛などのブランド和牛の多くが黒毛和種を基にしており、黒毛和種の肉質は脂肪が入りやすく、水分量が多く柔らかいです。特有の甘い香りとともに、口に入れると溶けるような柔らかさがあります。赤身に乳白色の脂肪が霜降り状に入る特性をもっています。
霜降りが多くキレイに入り、肉質もきめがこまやかな牛肉が最高級のランクになります。この霜降り人気は1991年の牛肉輸入自由化とともに差別化のため、高品質、高価格のブランド牛の生産が進みました。また、消費者からもその品質の高さと高級嗜好が好まれ、現在の和牛市場が形成されてきた経緯があります。
しかし、最近では消費者の健康志向や牛肉に対する嗜好の変化から、霜降り嗜好だけではない、好みの広がりが注目をされています。
関心が高まる「赤身肉」について
和牛はその霜降り肉のイメージから、コレステロールが高いというイメージを持たれていますが、最近は、和牛の「褐毛和種」や「日本短角種」「無角和種」など、脂肪交雑が適度で旨味を豊富に含む赤身の肉質を持つ和牛に注目が集まっています。
特に牛肉はたんぱく質を多く含み、必須アミノ酸やビタミンB群など健康にかかせないさまざまな栄養素が多く含まれており、健康志向の高まりとともに良質な牛の赤身肉への関心が高まっています。
褐毛和種や日本短角種、無角和種について
牛肉の等級評価では、肉質評価において、脂肪交雑の程度が大きく影響を受けます。そのため、赤身を特色としてきた「褐毛和種」「日本短角種」「無角和種」などは、脂肪交雑でA2等級やA3等級となり、肉質において黒毛和種より劣ると評価されてきました。
しかし最近では、健康志向の高まりとともに、牛肉本来の旨味を楽しむ赤身肉の評価が見直されてきています。ネットでのお取り寄せでも、赤身が美味しい和牛など「黒毛和種」以外の和牛の販売が人気を集めています。
まとめ
奥の深い牛肉の世界。等級表示を理解することで、自分の好みに合った牛肉の美味しさを発見できます。それぞれの美味しさと価値を知り、ぜひご自身の好みにあった牛肉を見つけてみてください。
牛肉料理しもかわでは、唯一無二の牛肉を求め続けてきた「牛肉のプロ」のオーナーシェフが厳選した希少種の無角和種の阿武牛、また在来種で和牛のルーツである見島牛などを使用したメニューをご用意しております。
練馬区の大泉学園駅から徒歩圏内にお店がございますので、お時間ございましたら、ぜひお気軽にご来店ください。お電話・フォームからのご予約も承っております。
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